心をすくう二番目の君

*

掛かって来た内線を、何の気なしに取り上げた。

「はい、小椋です」

モニターを眺めたまま、マウスをクリックしながら答えた。
僅かに間を置いて、耳慣れた声が名乗る。

『射場です』
「……お疲れ様です」

椅子に深く腰掛けていた上体を起こし、身構える。

『昼休みに7階の第2会議室へ来て貰えませんか?』
「……」

まさか堂々と内線して来るとは考えが及ばず、周囲に会話が漏れているかも知れないと緊張が走った。
“用事があるんです”……“お断りします”……。
いずれの言い訳も、私用の電話だと読み取られそうだ。
頭を回転させたが、咄嗟に上手い切り返しが思い付かなかった。

「……わかりました。廊下まで行きますね」

最大限頭を捻らせて、やっとのことで返答した。
受話器を置くと、深い溜息が零れる。
そろりと周りを窺ったが皆忙しなく業務にあたっており、中薗さんも含めわたしの通話に頓着している様子はなく、差し当たり胸を撫で下ろした。

< 116 / 209 >

この作品をシェア

pagetop