心をすくう二番目の君
警戒を顕にしながら、会議室前まで足を運んだ。
ひとまず射場係長の姿は見えない。
廊下まで向かうと伝えたが、既に中へ入っているのだろうか。
約束を取り付けられたからと言って踏み倒せば良かったのかも知れないが、後で面倒なことになるのも気が重かった。
ドアノブに右手を掛けようとした瞬間に、扉が開いた。
目を見開き、身を竦める。
一瞬の隙を突いて、腕を取られ中へ引き摺り込まれた。
ドア側へ回られ鍵を掛けられてしまう。
「……何故鍵を……」
「来てくれてありがとう。どうしても会って話したかったんだ」
怪訝な声色を浮かべたわたしの問いには答えずに、腕を放すと礼を述べた。
「……」
束の間ながらも掴まれてしまった右腕を左手で摩ったが、相手のペースに呑まれまいと覚悟を決めた。
姿勢を正すと、用意していたありきたりな台詞と共に頭を下げた。
「ご結婚おめでとうございます」
顔を上げると前の人は、悪びれた風もなく目を合わせた。
こちらが怯みそうになったところをグッと堪えて、反応を待った。
「……そう、花澄に似合うと思って買って来たんだよ」
何を言い出したのかと不審感を募らせていると、おもむろにポケットから箱を取り出し開いた。
ボックスを長机に置くと、中身を手に取り一歩前へ出る。
反射的に同じだけ後退ると、今度は左手を取られた。
革製品に見受けられるそれを、手首に巻き付けようとしているらしかった。
最度箱に視線を滑らせると“Made in Italy”の文字。
背筋が凍り付くような衝撃を受け、その手を思い切り振り払った。
ブレスレットが床の上に叩き付けられる。