心をすくう二番目の君
「……やだ……離して下さい」
瞬く間に机に押し倒され、手首を拘束されていた。
視界を過ぎった冷ややかな表情に青ざめ、身を捩ったがびくともしない。
本当にこの人が、わたしの好きな人だったのか?
「……それは、他の男の影響か?」
戦慄くような低い声に、恐怖心が煽られる。
わたしの上に覆い被さり身体をまさぐり始めた男の表情は、この位置からは窺えない。
脚をばたつかせて試みた抵抗も虚しく、こちらが拒否を示せば示す程、一層激昴させていると思い知らされた。
「他の男にも脚開いてるんだろ!」
目の色を変え憤った眼前の男に、かぁっと頭に血が上った。
「しませんそんなこと……っ! あなたじゃないんだからっ……」
鋭い音が響き渡ると共に、視界がぶれた。
一瞬何が起こったのかわからなかったが、頬に走った痛みに、ぶたれたことを理解した。
信じられない立ち回りに放心し、脱力した腕をようやっと持ち上げ顔を押さえた。
「あ……」
睨み付けると、立ち竦んでいた男は正気を取り戻したのか怯んだ。
もっと凄まじい形相を予想したのに、その面差しは何処か弱々しく、物悲しげに映った。
何故あなたがそんな顔をするのか。
胸を刺す痛みの正体がわからないままに、隙を突き腕の中から擦り抜けた。
なりふり構わずドアに向かって駆け出す。
「さよなら」