心をすくう二番目の君
終幕
混乱した頭の整理を試みて、廊下へ出た。
じきに昼休みも終わってしまう。重い足取りで設計室へと向かった。
「小椋さん」
背後からすっかり聞き馴染んだ声に呼ばれて、冷や汗が流れた。
──大丈夫だ。それ程、赤くなったりはしていない。
水で幾らか冷やして来た自分の顔を思い起こす。
言い聞かせながら振り向くと、神妙な面持ちで長い睫毛を伏せている人が立っていた。
「……あのさ……」
面と向かって話すのは久しぶりだった。
前の人も同じことを考えているのか、言葉を探すように声を詰まらせて、口元に右手を添えた。
「この間のこと、本当にごめん。お詫びさせて」
春志は真っ直ぐにこちらを見据えて口に出した。
「いいよ、そんなの……気にしてないから」
半分は嘘だったが、笑顔を取り繕う。
しかし、この人は引き下がらず眉根を寄せる。
「駄目。俺が気にしてる。今日空いてる?」
「……うーん……あっじゃあ、わたしの行きたいお店でも良いかな?」
微妙な場の空気を払拭出来そうな店を思い描き、閃く。