心をすくう二番目の君

都会の真ん中に町屋風の古民家は存在感がある。
表には格子が建て付けられており、藍色の暖簾が下がっていた。
敷居の高そうな佇まいだが、営まれているのは洋食屋だ。

座敷で頂けるオムライスが有名で、以前から興味があったものの、ランチで訪れるには距離があるのでタイミングを逃していた。
バックストラップミュールを脱いで上がると、所作に気を配って座布団に腰を下ろした。
花金だが、ディナーメニューがあるような店ではないためか、客足はまばらだった。

「洋食屋で良かったの?」
「え? 雰囲気良いでしょ? 此処」

「確かに良いチョイスだなとは思ったけど。もっとたっかーい店に連れてくチャンスだったのに」
「あはは。じゃあ、海老フライも付けていい?」

何か眩しいものでも見るように目を細めていて、胸が締め付けられた。
春志が時折見せる、柔らかい表情が好きだ。
開けっ広げの縁側から抜けた涼しい風が、熱い頬を撫でる。
夜も風情があるけれど、まだ見ぬ昼の姿にも興味が沸いた。

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