心をすくう二番目の君
「シャンパンも付けようか」
頬杖を付いた前の人が、座卓の脇に立てられたレトロなドリンクメニューを取り上げる。
注文を終えると、幾ばくもなくドリンクが運ばれた。
グラスの脚を傾け淵を合わせると、涼やかな音が鳴った。
この趣のある空間に相応しい、心地良く流れる時を噛み締めていた。
デミグラスソースのオムライスにスプーンを入れながら、向いの人が口にする。
「誕生日のこと、考えた?」
「……えっと……」
「希望言わないと、俺が勝手に決めるからね」
何やら楽しげに意地悪な笑みを浮かべている。
実際はあれこれと調べながら、思い悩んでいた。
「……ヨーロピアンヒル……」
「えっ? あぁ、テーマパークの?」
話すつもりはなかったのに、迂闊にも声に出してしまっていて、慌てて執り成した。
「うそ、思い付いた場所言ってみただけ」
園内には有名な恋人達の聖地があり、検索している内にヒットしたのだ。
神様だとか言い伝えだとかにでも、あやかりたいのは本音だ。
しかし、そんな人出の多い場所へふたりで出掛けられるなんて希望は抱けなかった。
目線を落とし、言い繕う。
「……もう少し考える」