心をすくう二番目の君
「はい、寧実《ねみ》?」
躊躇うこともなく、瞬時にわたしの身体から手を放したかと思うと、電話に出た。
「花見抜けて来たから、これから向かうわ」
視線を外し受け答えをしていた顔が、こちらを振り返る。
耳元に受話口をあてがったままで、ひらひらと掌を振った。
桜が舞い散る夜空に浮かんだ薄い笑顔は、怖いくらいに綺麗だった。
遠のいていく中薗さんを、ぼんやりと見送る。
「あっ小椋さん!」
声を掛けられて我に返った。
三澤さんが顔周りの髪を揺らしながら、小走りで駆け寄って来る。
「なかなか帰って来ないから迷ったかと思った」
「あっ……すみません。ありがとうございます……」
放心状態が抜け切らないままに、曖昧に返事をした。
「中薗くん、帰っちゃったね。他もそろそろ解散かも知れないけど」
後姿を見つけたらしく、呟いたその口から出た続きに意表を突かれた。
「あ、小椋さん。イケメンだけど、あの子は駄目だよー」