心をすくう二番目の君
「……え……」
増して行く心の騒めきに抗いたい衝動に駆られた。
「彼女居るみたいよ。それも10年も付き合ってる」
「……10……年……!?」
大きく波打っている鼓動を感じながらも、表情に出てしまわないように、悟られないように努力した。
「なんか中学の時から付き合ってて、結婚も近いんじゃないかって噂。凄いよねー。一級建築士も取って、将来有望そうだから惜しいなぁー」
ひとり噂話に興じている彼女を余所に、わたしは衝撃から自分の瞳が揺れている気がした。
何故衝撃を受けたのか、考えるまでもなく気が付いていた。
『後の予定に響く』と話した彼の声が浮かび上がり、繋がってしまう。
最初から、彼女と会う約束を考慮していたのだと。
去り際の儚げな微笑が、繰り返し脳内で再生される。
溺れているわたしの心を掬い上げてくれるんじゃないかなんて、どうして期待したんだろう。
そんなものは幻想で、勘違いでしかなかった──