心をすくう二番目の君
どうにか逃げ切りたくて、もつれそうになる足を必死で前へ進めた。
土曜日の朝の、閑散とした街の空気を肌で感じながら、爪が食い込みそうな程に掌を握り締めていた。
彼は『容態が落ち着くまで』と言ったが、そんなものいつになるのか解らない。
結局別れないのは、ネミさんが心配なのだ。
早急に場を去ろうとしていた足が、力なく動きを鈍らせる。
立ち竦んで、俯いてしまった。
曖昧な関係は、辛い。
いずれ彼女に帰って行くなら、早い方が良い。
これ以上一緒に居て、ふたりの関係を壊してしまう前に。
春志の幸せを願ってる。
……願いたくて、良い女の振りをしたくて、これ以上醜い自分を見せたくなかった。
「……うっ……うぇっ……ひっ……」
張り詰めていた糸が切れ、嗚咽を漏らした。
涙が後から後から頬を伝って落ちる。
射場係長と切れたことを告げたからって、彼女に帰って行くなら、余計傷付くだけだ。
わたしは何も解っていなかった。
二番手にされている自分が可哀想だからって、創一さんの向こうに居る、春志の向こうに居る、彼女の存在を消してしまっていた。
彼女達が痛めている心を無視して、自分が彼を好きだから、自分が寂しいから、一緒に過ごすことを、関係を持つことを、止められなかった。
そんな女が幸せになれるはずがなかったんだ。
わたしを幸せに出来るのは、相手の男の人じゃない。
自分を幸せに出来るのは、自分自身だけで、わたしがわたしを幸せにする行動を取って来なかった。
この胸の痛みは、その報いだった──