心をすくう二番目の君
誘引
──あぁ、まずいことになった……。
「おはようございます」
間もなく月曜日の始業を迎える時刻、そわそわと急いて来た気持ちをひた隠しにして、普段通りを装い笑顔で席に着いた。
ちらりとこちらを見遣った中薗さんの姿を視界の端に捉えた気がしたが、ひとまずスルーしておいた。
物陰に身を潜めでもしたい心境であったが、無論そんなあからさまに避けるわけにも行かない。
気まずさからぎりぎりまで更衣室で時間を潰してはしまったが、何しろ設計士に指示を仰がないことにはわたしの仕事は展開しないのだ。
実際はドキドキと大きく震えている胸の内を治めるべく、気付かれないよう静かに息を吐き出す。
システムを立ち上げ、業務の手筈を整えて行く。
大丈夫だ。まだ“気になる存在”だっただけだから。
沸き上がってしまった名前のない想いは、封印する。
それよりも、射場係長との関係を知られてしまったことの方が厄介だ。
此処は開き直って“敬意とやる気をアピールして水に流してもらおう作戦”だ。
「中薗先生! 今日もお願いします!」
顔が引き攣らないよう気を配って、ディスプレイに向かって難しい顔をしている彼の隣に立った。
ゆっくりと振り返った人は、やや怪訝な表情を浮かべている。