心をすくう二番目の君

「……“先生”は、やめて……?」

「では、中薗リーダー」
「……それもちょっと……」

眉間を寄せて、指先を当てている。
聞いたところによると、この春からリーダーに任命されたばかりらしい。

「じゃあ……中薗先輩」

ひたすらへらへらと笑顔を向けていると、根負けしたかのように溜息をついた。

「…………まぁ良いや。じゃあ、次の基本図描いて貰うんだけど……この辺に無線機置いてー……」

広げた図面に、骨ばった指が示した箇所がトンと微かな音を立てた。

「あー、この間……木曜だったかな? 無線機を引っ張って来た図面あったでしょ。あれ開いて貰える?」

わたしの席へ移動して、共有サーバーにアクセスする。
しかし施工部のフォルダにも増して、ごちゃごちゃとしていて解り辛い。

「これでしたよね?」
「そうそう」

「このサーバー……もうちょっと整理した方が解りやすくないですかね~……」

ファイルを開きながら、口を突いて出てしまう。
社員さんに向かって、ぼやいたような態度になってしまった。

「あー、確かにねー……。で、無線機はこれなんだけど、アンテナがね……」
「別のフォルダですかね?」

カチカチとマウスをクリックしながら上層のフォルダに戻っていると、狭いデスクの隣に椅子を押し入らせて来た。
近過ぎる距離に否が応にも高鳴ってしまう心音を呪っていると、真顔がディスプレイを覗き込んだままで呟く。

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