心をすくう二番目の君
休憩時間廊下へ出ると、壁の向こうから耳馴染んだ声が近付いて来た。
「……彼女ねー……」
「あれっ、彼女さんと上手く行ってない感じですか?」
心臓が荒ぶり出し、咄嗟に身を潜めてしまった。サンダルのヒールが鳴らないよう気を配りながら、恐る恐る覗き見た。
後ろ姿から、相手の女子は山川さんだと思われた。
「別れたんだよ」
「えっ! 何でですか!?」
「何でって……付き合ってると色々あるでしょ」
春志の表情は確認出来なかったが、聞き耳を立てたまま硬直してしまう。
別れた……? ネミさんと……?
呆然と顔を俯けていると、彼女がずけずけと質問を畳み掛けた。
「他に好きな人が居るとかですか?」
「……うーん……今は、誰とも付き合う気ないって言うか……」
次第に声が遠ざかり、強ばらせていた肩を緩め息をつく。
なんで……どうして、ネミさんと別れているの。
音量を上げ騒めく心を制したかったが、意志に反して目線が泳ぐ。
思惑とは真逆の方向へ事態は展開したらしかったのに、この期に及んで胸膨らませている自分を感じ取り嫌気が差した。