心をすくう二番目の君
有地さんの肩に骨張った指が掛けられ、長身が振り返る。
手の主は目を合わせると、厳しい声色を出した。
「駄目ですよ、小椋さんは。うちのチームでしっかり一人前に育てるって決めてるんです」
言い切ると春志は有地さんに向けていた目線を、こちらへと流した。
嗜めるような眼差しに肩を跳ねさせてしまう。
「そんな生半可な覚悟じゃないよね? 士補も取って調査も出来るようになるんだろ?」
「……は、はい」
目を見開いたまま、身体を強ばらせて答えた。
彼は何処か面白くなさそうに眉を顰めると、部屋を出て行った。
「何じゃあれ。こわ~。そんなムキになんなくても、社員になったばっかの人を本当に引き抜けないって」
頭上で有地さんがぼやいていたようだが、わたしの心は立ち去った人に奪われてしまった。
抑えようと努力しても、どうしても胸が高鳴る。
どうしてわざわざ、あんなことを言って来たんだろう……。
思い至った想像に、諦めなければと蓋をしていた気持ちが溢れてしまいそうだった。
しかし、春志は『今は、誰とも付き合う気がない』と口にしていた。
そもそも自分から遠ざけておいて、一喜一憂しているわたしは何処まで身勝手な女なんだろうと思い直す。