心をすくう二番目の君
信じられない光景に目を疑う。
今しがた噂されていた人がどういうわけかそこに立っていて、平然と腰を下ろした。
「……飲んでる?」
臆面もなく真っ直ぐに目を合わせて来た人と、わたしは向き合っていられなかった。
堪らず俯いてしまったが、どうにか返事を絞り出す。
「……はい……飲んでます……」
梅サワーのジョッキを持ち上げて見せて、あからさまに顔を背けるのも不自然だと怖々目線を上げた。
その瞬間、彼を全く忘れられていない自分を確信した。
大好きな春志の柔らかな笑顔を、暫くぶりに見た。
射抜かれて大きく高鳴り始めた鼓動をどう収めようか、心を尽くそうとするが、わざわざ移動して来た人が挨拶だけで終わるはずもなかった。
「昇進おめでとう」
「……ありがとうございます……」
ビールジョッキを差し出されて、ひと当たり淵を合わせる。
座敷で乾杯というシチュエーションが、まるで此処が最後に食事をした洋食屋であるかのような錯覚を起こさせた。
あの日の照明の色合い、テーブルの艶、上品な音や風の温度までもが、脳裏に蘇り身体を纏うようだった。
既に泡のなくなった液体を流し込んでいる。
見蕩れるように上下する喉仏を眺めた。
感付かれてしまいそうな間際に、わたしも慌ててサワーを一口含んだ。