心をすくう二番目の君

デスクへ近付くと、足音を察したのか顔を上げた。
彼は驚いたように目を丸くしたかに見えた。
途端、心臓が早鐘を打ち始めたが、出来る限り気を落ち着かせ口を開く。

「お疲れ様です。伊藤さんに射場係長が担当されているとお伺いしたんですけれども……」
「お疲れ様……ちょっと待って」

すぐに何処の無線局についてなのか理解したらしく、ディスプレイに目を通し始めた。メールの内容をチェックしているらしかった。

「オーナーの追加要望があったんだが、話が行き違っていて揉めてるんだ。工事費が高額になっていてね。詳細が確認出来次第、連絡する。メールを転送しておくよ」
「わかりました。よろしくお願いします」

軽く頭を下げ顔を上げると、前の人がじっとこちらを見つめていて、肩を跳ねさせた。

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