心をすくう二番目の君
立ち止まっていても此処からは抜け出せないと、鼻を啜って顔を上げる。
泣いてばかりではいけない。
心を奮い立たせると、滲んだ景色の遠目に、樹木の隙間から覗く鐘が見えた。
「……」
吸い寄せられるように腰を浮かすと、覚束ない足取りながら近付いて行く。
一歩接近する毎に、徐々に吊鐘が大きくなって映る。
上がり段を登り、眼前に迫ったベルを見上げた。
喜びの鐘と呼ばれるそれは、恋人達の聖地として親しまれている。
これまでに好きな人と訪れたことはなく、間近で目にしたのは初めてだった。
シンプルながら、想像していたよりも優美な佇まいだ。
おずおずとロープへ手を伸ばす。
これを鳴らせば、誰かが助けに来てくれるかも知れない。
その可能性を考慮したのは確かだった。
だけどそれ以上に、一緒にこの場に立ちたかった人を脳裏に描いた。
息を呑み、思い切って綱を引く。