心をすくう二番目の君
ビルを後にして大通りへ出る狭間も、春志に手を引かれていた。
空いた方の掌を挙げ、タクシーを止めている。
車内へ連れ込まれた。
何処まで帰るのだろうと緊張を纏った身体を強ばらせていると、行き先が告げられ、車が発進する。
すぐに春志の住む方面だと解った。
「……あの……」
「明日、半休取ってるよね?」
「……はい……」
淡々とした口調に、何故か他人行儀になってしまう。
更に速まった鼓動の音を感じ取って、横目で怖々と視線を送っていると、窓の外を眺めたままで口にする。
「此処から花澄の家までタクシーで帰ってたら、1万近く掛かるんじゃない?」
まるで無言の訴えに対するフォローのような切り返しが来て、目を瞬いた。
それは確かにそうだ。折角の深夜割増の残業代も、タクシー代に消えてしまうかも知れない。
「明日、電車で帰ったら良いよ」
未だ繋がれっぱなしの手を、強く握られる。
“明日”という常日頃耳にする単語が、妙に色を含んで聞こえた。
「て、いうか……」
振り返った眉根を寄せた端正な顔が、言い放つ。
「今日は駄目だよ。帰らせない」
外を走る車のライトが一瞬彼の背面を照らしたかと思うと、赤く高揚した頬が顕になり、息を呑んだ。
熱を宿した瞳に、心臓を捕まえられてしまった。