心をすくう二番目の君

初めて踏み入った部屋は、シンプルながら洗練された雰囲気を醸していた。
玄関を上がり後に続く途上、どういうわけか息を潜めた。

ふたり掛けのソファとローテーブルが配置してあるリビングは、あまり物は多くなく落ち着いた色合いで纏められている。
程よくアクセントの効いた小物を取り入れてあり、センスが光って見えた。

前の人が不意に立ち止まるので、つんのめりそうになる。
先程の力強さは何処へやら、見返る歪めた目元は何処か情けなく映った。

「……花澄がいる……」

瞳を合わせると、確かめるようにそっと頬に触れる。
存在を焼き付けるかのように、瞼、顎、首筋と撫でている。

「……うん、いるよ……」

気持ちを通わせてからというもの、次から次へと多彩な表情を見せてくれる春志が、堪らなく愛おしくて、指を唇に伸ばした。
大人しく触らせていたのも束の間、手を取られたかと思うと歯痒そうに顔を近寄せた。

瞬く間に唇が奪われる。
啄んで、吸い付いて、そのリズムと同調するように、絡め合った指先が肌の上を跳ねる。
舌を口内に滑らせて、混ざり合った吐息が互いの情欲を掻き立てた。

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