心をすくう二番目の君

遅い朝、身支度を整え窓へ寄った。
カーテンの向こうはよく晴れて、爽やかな秋の高い空が広がっている。

まだベッドの中で微睡んでいる人の側へ屈む。
瞼へキスを落とすと、その瞳が薄らと開く。

穏やかに微笑んで見せると、前の人は暫し瞬きを繰り返した後、柔らかく目を細めてくれた。

「じゃあ後で、会社でね」
「……うん。約束」

掌を広げると、大きな手で包み込んで応えてくれる。
今度は別れの挨拶じゃなく、すぐに訪れる再会を言い交わした。

やっと幸せの在り処へ、辿り着くことが出来ただろうか。


人もまばらな昼休憩中、出社すると既に席へ着いていた彼が、わたしの気配を感じ取ったのか顔を上げた。
視線を合わせると、自然と頬が綻んでしまう。
午後からの業務を滞りなく開始出来るよう、隅の壁面書庫へと向かうと、山川さんが擦り寄って来て声を抑えて囁いた。

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