心をすくう二番目の君

「……小椋さん今ー……中薗さんと目と目で会話してませんでしたぁ? ふたりとも出社するなり、怪しーい」
「えっ? ……何のことですか??」

誤魔化そうと試みるも、彼女は確信を持っているらしく、唇を尖らせ不満を零した。

「なぁんだ、警戒することなかったなぁ」
「……それって……前に言ってた“どっち”って……」

『狙っても良いですか?』と宣言した彼女のお目当てはつまり……。

「だーってフラれたくないじゃないですかー。小椋さんはどっちなんだろうって、カマ掛けたんですけど。これで心置きなく有地さん狙えますね」
「……頑張って下さいね……」

てっきり春志に気があるのかと思っていたから拍子抜けしたが、ホッと安堵の息をつく。

「お幸せに」

わたしの背中を軽く叩いて、今日はポニーテールにした髪を左右に揺らしながら、ご機嫌に去って行った。
自らの幸せの為とは言え、人に祝福して貰える関係になれたことが、こんなにも心を支えてくれるのか。
いたずらに微笑む彼女の顔も、まるで女神のように背中を押してくれているように思えた。



END.

< 181 / 209 >

この作品をシェア

pagetop