心をすくう二番目の君
違和感が確信へ変わったのは、寧実が俺と花澄の前に姿を現した時だった。
「へえぇ、作業着で現場に行くんですかぁ。似合わなさそ~」
「案外、様になってますよ」
どういう弾みか3人でお茶を飲む羽目になり、よくわからないふたりの掛け合いが、俺を否応なしに青ざめさせた。
彼女達の美しい笑顔の裏に飛び散る火花が見えるような錯覚を抱き、引き攣りそうになる表情筋を堪える。
居たたまれず、その場を離れた。
個室が一室あるのみの御手洗に篭ると、頭を掻き毟り項垂れる。
意図せずも、肺の奥から吐き出すような大きな溜息が零れた。
組んだ腕に乗せた指先が、忙しなく上下している。
一体、なんてことをしてくたのか……。
“俺の彼女”に対する不信感を一層募らせながら、瞳を閉じ眉間に指先を当てた。
寧実の罠に乗ってしまう花澄も恐ろしかったが、それ以上に心配だった。
自業自得だが、こんな状況の上、傷付けてしまったであろうことを悔やんだ。
「……」
暫し脳内で現状の整理を試みて、閉じていた瞼を開いた。
……考えれば考える程、おかしい。
いくら定時で帰ると想定したと言えども、会社の具体的な場所を教えた記憶もない。
駅の出入口は複数あるはずだ。何故此処へ来ると知っている?
思い至った想像が受け入れ難く、膝に置いた掌に力を込めた。
それが事実ならば、余りに無念であるがために、考えを及ばせることを避けて来たのだ。
前々からの疑念を晴らす時が来たようだ。
ジャケットのポケットに突っ込んであったスマートフォンを取り出し、ロックを解除した。
画面に表示させた項目に、改めて目を走らせる。