心をすくう二番目の君

*

自分の言動が、それ程までに花澄を傷付けていたことを、突き放されて漸く実感する。
何処かで薄らと察していた事実から目を背けて、彼女にだって他の男が居るのだからと言い逃れして、結果一番大切なものを失ってしまった。

花澄が出て行った部屋で、覚束ない足を引き摺りベッドへどかりと腰掛けたきり、呆けていた。
我に返った頃にはチェックアウトの時刻が差し迫っており、気を急かされ腰を上げる。

追い立てられたまま地下鉄に乗車し、車両に揺られている間に、霞掛かったようだった頭が幾らか冴えて来た。

本心であるかどうかは別として、花澄の言っていたことは真っ当で、反論の余地はなかった。
昨夜の花澄の、艶めいた仕草や表情が蘇る。
彼女から見て取れた恋心に偽りはなかったように思える。
しかし、好きだからと言って当然不満はあっただろう。

「…………」

座席の側に立ち上がっているポールを握った手元を、目に映していた。
いずれにしてもあんなことを言わせてしまった己を顧みて、自責の念に苛まれた。


部屋へ帰り着き、時計へ目を遣ると11時を回っていた。
そろそろ連絡が入ってもおかしくない頃合だと考えていたが、その後夕方になっても何の音沙汰もなかった。
先日あいつを拒んだ後、特に次に会う約束は取り付けていなかった。

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