心をすくう二番目の君
あれ……婚約者だ。
本当に、婚約者なんだ……。
手元のメニューへ目線を落としながら、頭の中はその言葉だけが繰り返し響き続けていた。
あの女性が社外の人間である根拠はないけれど、直感で確信を持ってしまった。
ストレートのロングヘアが綺麗な、女らしい服装の人が彼の腕に手を添えていて、彼の方も、見たことのないような柔らかな面差しだった。
「私はサーモンとほうれん草のクリームパスタにする。小椋さんはどっち?」
「……あ、じゃあ……わたしも同じものを」
辛うじて働いている思考をフル稼働させてメインを選び、笑顔を作って受け答えした。
「前菜も美味しいんだよ、ここ」
「そうなんですね。わたしそんなに色んなお店行ってなくって……楽しみです」
うわの空で厚意を無にしては申し訳ない。
今は三澤さんとの食事に集中したいと、向かい側の微笑みを見つめるが、すぐに心が邪魔を入れてくる。
全く違うタイプだと、心の奥では愕然としていた。
わたしは服装もカジュアルで、色気には欠ける。
見た目だけでなく仕草や雰囲気からも、大人の女性の落ち着きを思わせた。
考えてみれば、創一さんはわたしの何を気に入って関係を続けているのか、未だよくわからなかった。
訊くことが出来ずにいたのだ。