心をすくう二番目の君
昼下がり、業務の隙間に御手洗へ立った。
「小椋さん」
廊下へ踵の音を響かせていると、背後から呼ばれ足を止めた。
顔を確認せずとも声の主はひとりしか思い当たらず、気が進まなかったが致し方なく振り返った。
昼休みに撥ね付けた相手が、困ったように薄く笑っている。
待ち伏せでもしていたのかと思わせるタイミングの良さで、図らずも訝しい視線を投げる。
「……なぁ……どうした?」
「……別に……どうも」
切り出し方に益々腹が立ち、眉間を寄せた。身長差から、睨み上げるような格好となる。
身を引き、突っけんどんな対応になってしまった。
「そう怖い顔するなよ」
「ちょっ……」
創一さんに手を取られ、人目に付きにくい仄暗い給湯室へ連れ込まれる。
そのまま抱き留められた。
「……っ、離して下さい」
「良かった、会って話せて。今頃休憩する時間かと思って」
後頭部を撫でながら、頭上に落ちる吐息に胸が震えた。
煙草の香りが鼻腔を掠めると、拒否したい心の動きと裏腹に、鼓動が速度を付け高鳴る。
「……とにかく、今日は行きませ……」
腰に回された大きな手に力が篭められたかと思うと、耳元に顔を寄せる。
「こうしてると、安心する。けど……まだ花澄が足りない」
甘い言葉を囁かれ身体を熱くしながらも、これは嘘だと改めて実感を持った。