心をすくう二番目の君

幸せを求めているはずなのに……わたしが創一さんを断ち切れないのは、離れた時の痛みに耐えられないからだと、理解していた。
誰からも必要とされない、求められる実感を持てない日々を送るのは、辛い。
彼を失っても尚、己を支えて行ける自信がなかった。


設計室内へ戻ると、中薗さんは早速お菓子を摘んでくれていた。
椅子を引きながら横目に入れると、明日の誕生日本番が頭に描かれ瞼を伏せた。
きっとわたしなんて思い出すこともなく、彼女と幸せな時間を過ごすのだろう。

憂鬱な気分を引き摺ったまま帰宅するのも嫌で、残業することにした。
連休前ということもあってか、皆早々に散り散りに消えて行き、残るメンバーは数少ない。

席を立った中薗さんへ、ちらりと送った視線が絡んでしまう。
そのままこちらへ向かって来るので、鼓動が身体に響き始める。
隣で足が止まった。合わさったままの瞳は見竦めるようなものに思える。

「そろそろ上がったら? お疲れ」
「……はい。ありがとうございます」

あやふやにお礼を告げながら、引き止めたい衝動に駆られた。
目を離せずにいると、整った真顔が訴え掛ける。

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