心をすくう二番目の君

浴衣に身を包み、温泉街をカラコロと下駄を鳴らし歩いた。
目に映る景色全てが情緒を漂わせており、見ているだけでも気分が高まる。
きょろきょろと眺め回していると、前方に手を繋いだカップルが見切れ、二度見する。無論、浴衣姿だ。

「良いなぁ~私もまた悠《ゆう》ちゃんと来ようかなー!」

肩を叩かれ我に返る。熱心に見つめ過ぎたらしく、隣から身を寄せて来た人が明るい声を上げた。
最近になって出来た彼氏とは、まだ旅行は経験していないらしい。

彼氏と旅行……妄想した脳内に浮かんだのは、創一さんではなく中薗さんだった。
あ、絶対浴衣似合う。間違いない。
呆けていると、突っ込みが入り現実へ引き戻された。

「んっ、クズ男想像してる!?」
「……違う……別の人」

真顔のわたしと対照的に、百面相の如く、くるくる変化する紫夜の表情が面白い。

< 57 / 209 >

この作品をシェア

pagetop