心をすくう二番目の君

しかし何度内線しても出ないな。
左肩に受話器を挟みながら、デスクの上で忙しなく上下している右手の人差し指に気付かされた。

設計士は基本的に設計室内に所属しているものの、少数だが設計と施工を兼任している人が居る。
先程から第1施工部のその人へ指示を仰ぐべく4桁の数字を押すが、呼出音が鳴るばかりで一向に応えてくれない。

気が進まなかったが、致し方なく第1施工部のあるひとつ上のフロアへ足を運んだ。
仕事に私情を挟むわけには行かない。
社員証を翳して入室し、件の人を探すべく目を走らせた。
少なくとも、自席には居ないようだった。

「あのー、伊藤さん出社されてます……?」
「あ、小椋さん。ちょっと待ってねー」

かつての仲間を呼び止めると、確認を取る為かそそくさと離れて行った。
息をつき視線を逸らすと、目に飛び込んで来た人物は伊藤さんではなく、射場係長だった。

げっ……。

心の声が顔に出てしまいそうで、焦って表情を取り繕う。
よく考えれば笑顔を作る必要もないように思えたが、時既に遅し。
目を合わせた人はどういうわけか、こちらを見つめたまま動かず、視線を外すタイミングを完全に失った。

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