心をすくう二番目の君

創一さんの勢いに気圧されて、約束を取り付けてしまった……。
連休明けは忙しない。業務に支障が出ないよう、水曜のノー残業デーに近くのカフェで待ち合わせている。
少ない猶予は飛ぶように過ぎ去り、瞬く間に当日を迎えた。

心の片隅で緊張感に取り巻かれながらも、滞りなく業務に当たった。

「中薗さーん、此処の回線ですけど……」

声を掛けようとして、数メートル手前で足を止めた。
ディスプレイに向かう眼差しが、あんまり凛としていたから。
複雑な図面を操る横顔は、真剣そのものだ。
数学の強さが求められる設計士だから、頭の中で難しい計算がなされているのだろうか。
暫し見蕩れていると、気が付いてこちらへ真顔を向けた。

「……何見てんの?」
「えっ!? 見てたって言うか……! ……見てました」

言い当てられ、どぎまぎしてしまい声は徐々にか細くなる。
正直に認め、俯いて耳に掛けたサイドの髪を弄っていると、前方から投げられた返しに目を瞬いた。

「……否定してよ」

掠れた声に頭を上げると、照れたような面差しが目に飛び込んで来る。
鳩が豆鉄砲を食ったように、口も開いたままに見入った。
我に返ると、掌を広げ慌てて返事を捻る。

「だって……すごい頭使ってるんだろうなって、傍から見てもわかるから……何ていうか、かっこいいなって」
「……何言ってんの?」

ぶっきらぼうな物言いながらも、中薗さんの頬が更に紅く染まる。
また初めての彼に出会い、胸が熱くなる。

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