心をすくう二番目の君
「で何、チェック?」
「あっ、はい……此処直さなくて良かったんでしたよね」
照れ隠しからか通常の仕事モードを演じているようだが、そんな姿すらも胸の高鳴りが止まらなかった。
「うん。回線図はこのままで大丈夫。締切余裕そうだな」
「そうですね! 他の図面も大体オーケーかと」
そんな彼が嬉しくて、浮かれた心が漏れてしまっていたのだろう。
「……元気そうかな」
いつから様子を窺っていたのか、図面からこちらへ視線を上げると静かに微笑んだ。
「え? 元気ですよ? 休み明けは忙殺されてましたけど」
ガッツポーズを作って見せると、ふっと柔らかく表情を崩して、僅かに眉を下げた。
「小椋さん空元気するからなー。今は、本当かな?」
瞼を伏せた彼が、このところの動向から慮ってくれているのだとわかった。
会話が途切れると、図面を繰る音だけが辺りに響く。
なぜ、この人は──
微かに漂う涙の気配を押し止めようと、瞬きを繰り返す。
一層熱く疼く胸元を悟られないように願った。
席を離れる際、後ろ髪引かれるように振り返ると、再びディスプレイに向かう耳の後ろが目に入った。
中薗さん。わたし今日、あの人から決別します──
心でひとり覚悟を語り掛け、拳を握った。
背中を押してくれた彼に、良い報告が出来るように。