心をすくう二番目の君
残業を開始して暫く、くしゃみが出て身震いした。
雨が降ったせいか気温が低いようだ。
暖かい飲み物でも買って休憩を挟もうと立ち上がると、斜向かいの空席に目が留まる。
定時までそこに居たはずの人は、何処かへ姿を消しているようだった。
リフレッシュルームのドアを開けると、行方をくらましていた人がソファに深く腰掛け、瞳を閉じていた。
僅かに心が動く。物音を拾ったのか、瞼を上げた。
「……お疲れ様です」
中薗さんは口を動かさずに、軽く手を挙げて見せた。
ココアを購入し、何処へ座るか些か迷ったものの、離れて座るのも不自然に思えて隣に腰掛けた。
湯気の立ち上るホットドリンクを暫し啜った後、沈黙が居たたまれずに話し掛けた。
「……此処、よく使われるんですか? あんまり来ないから知らなかった」
「……いや、俺もそんなに来ない……」
彼の骨張った指には、スポーツドリンクのペットボトルがぶら下がっていた。
睫毛を伏せ、肺の奥から出し尽くすように溜息を吐いている。
「今週は疲れましたね」
「本当に疲れた……連休で身体鈍ってるし……」
連休というワードが出て、不意に心音が速度を付ける。
テーブルの上の温かな缶を、包むように支えた。
「……連休は……何処か行かれました?」