心をすくう二番目の君

メールの送信を見届けて、共に設計室を後にした。
近頃は中薗さんが利用している地下鉄の駅まで、一緒に帰ることが増えて来ている。
先日食事の際は終電が迫っていた為、最寄りである地下鉄を使ったが、普段はもうひとつ遠い別の線に乗車している。
薄闇に包まれた街灯の下を歩きながら、遠目に残る没み掛けた夕日を眺めた。

「付き合わせちゃったな。悪い」

声を掛けられて目線を移すと、やや決まり悪そうに、こめかみ辺りを掻いていた。
リフレッシュルームでの甘えた態度について言っているのかと巡らせると、自然とはにかんでしまう。
薬が効いてきたのか、幾分顔色が良いように見て取れる。席へ戻って直ぐに飲んで貰っていた。

「明日の朝、ちゃんと病院行って下さいよ?」
「はーい……」

全く世話が焼けると眉を下げる。
唇を尖らせて念を押した。
力ない返事すらも可愛く思えて来るのだから、重症なのはわたしかも知れないと唇を噛んだ。

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