心をすくう二番目の君


「『運転見合わせ』……!」

表示されたアプリの通知に堪らず声を上げ、項垂れてしまった。
よく止まる路線だとは知っていたが、振替輸送も実施していないという。
中薗さんが訝しんで傘を寄せて来たので、情けなく青ざめてスマホの画面を向けると目を凝らしている。

「電車止まったか」

傘に囲われた空間で、綺麗な顔立ちが存外近く、照れた。
長い睫毛を眺めていると、その目線が前方を捉える。
地下鉄の入口へ到着した。

「お疲れ様でし……」

挨拶を遮って、手首を取られた。
固まるわたしを余所に、端正な顔は怯むこともなく真っ直ぐに見つめている。

「電車、動いてないんでしょ」

そうこうしている内に、更に雨足が強まって来た。
左手を捕えられたまま、強引に中の階段へ誘導される。
致し方なく傘を閉じた。

「雨も土砂降りだし。暫く此処に居たら」
「……えっ? 中薗さんは電車動いてますよね?」

「付き合う」

訴え掛けるような眼差しから、暫し目が離せなかった。
意味を捉えかねて狼狽えてしまう。
仄暗い壁際をバックに、中薗さんの顔半分には影が落ち、真意は読み取れなかった。

< 77 / 209 >

この作品をシェア

pagetop