心をすくう二番目の君
どちらからともなく人けの少ない場所を求めて、彷徨う。
階段が見える隅の方へ落ち着いた。
壁にもたれて、中薗さんがコーヒーのキャップを開ける。
お礼を告げて、わたしもココアを啜った。
ホットドリンクは冷えた身体にありがたく、胸にじんわりと温かさが染み入るようだった。
「5月って案外、嵐とかの発生率高いらしいよ」
「そうなんですね。あんまりイメージなかったです」
「さっき“メイストーム”っていうのが出て来た」
片手でスマホを操作すると、わたしの方へ差し出して見せた。
表示された台風のような気象図を覗き込むと、一層距離が詰まってしまう。
肩が触れ合いそうな間近に迫った彼の顔を、思わず仰ぎ見た。
視線が絡むとそのままじっと目を合わせている。
心拍は速く、胸の音は次第に大きく身体に響く。
ときめきと憂いが入り混じった心を自覚していた。
やりきれなくなって、目線を逸らした。
瞼を伏せ、消え入るような声で呟く。
「彼女に連絡……入れなくて良いんですか?」
「…………取ってるよ、連絡。無事は確認出来てる」
「……わたしよりも、彼女に電話なりしてあげた方が……」
後ろめたさから嘯きながら、目頭が熱く視界が僅かにぼやけた。
やば……駄目。絶対泣かない。
泣くのはズルい。
「……家に帰ってるって、言ってたから……家族が一緒に住んでるし」
隣から静かな低い声が届き、ぐっと瞼を瞑って堪えた。
ばれないだろうかと気を揉みながら顔を上げると、険しい表情がわたしをじっと覗き込んで来た。
「でも小椋さんは……誰が無事を見届けてくれんの?」