心をすくう二番目の君

──まずい。この距離は、空気は、身に覚えがある。
中薗さんの整った、しかしはにかんだような顔が目の前に迫っている。
足がもつれて、いつの間にか右肩も支えられてしまっていた。
轟音を立てている鼓動を呪いながら、必死に心を割いたものの理性を呼び戻すことは出来なかった。

「…………好き……」

俯いて消え入るような声でぽつりと呟くも束の間、接近した気配を避けられなかった。
眼前に長い睫毛が映り込んだその時、唇に柔らかな感触を受けた。
目を見開いている内に、一度離れた唇が再度口づける。
少し離れた位置から、ボトル缶が跳ねて転がって行く音が耳を掠めた。

駄目

心の中で叫んだのに、声にならないままに彼のジャケットを引っ張った左手は、しがみつくような形になる。

溢れてしまう、この気持ちが。
どうしようもなく、あなたのことが好きだって──

深く重なってしまう寸前、僅かに動いた理知が事態の深刻さを思い起こさせた。
胸元を叩いて抵抗を示すと、無理に推し進めることはなく身体が離された。
肩を掴んでいた掌が遠ざかると、見目好い顔が苦しそうに歪む。

「……ごめん」

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