心をすくう二番目の君
5分程歩いて連れられた店は創作居酒屋で、砂利の敷かれた入口から雰囲気が良かった。
床や柱の落ち着いた木目に、絞った照明が映えている。
特に予約はしていなかったようだが、案内された部屋は見たところ個室のようだった。
扉の中へ通されるなり、ぎくりとした。
壁際にテーブルが備え付けられており、掘りごたつの席は並んで座る形だ。
意図されたものなのか訝しんで隣の人を窺い見たが、顔付きから感情は読めなかった。
「……このお店、よく来られるんですか?」
「設計室の面子で何度か来たけど、個室は初めてだわ。あるって聞いてはいたんだけど……」
「……そうですか……」
考えてみれば、わたし達は表立って付き合えるわけじゃないから、個室のある店を選んだのは当然の成り行きにも思える。
ただこの部屋が下心を感じさせるような作りをしているだけだ。
こんな店があるなら創一さんに連れて来られていてもおかしくないものだが、大通りから外れているので案外知られていないのかもしれない。
「何にする?」
「果実酒の種類が多いんですね……迷うなぁ……」
広げられたドリンクメニューを覗き込みながら、言い聞かせた理屈も虚しく、僅かに翳り始めた心を察した。
まさにうってつけの隠れ家だと、自ら浮かべた感想に気が病みそうで、掻き消そうと笑顔を作った。
「あらごし桃酒にします」
右手の人はわたしと視線を合わせると、やっぱり柔らかく目を綻ばせた。
作為は感じられず、胸が締め付けられる。
そもそも何か魂胆があったからと言って構わないのではないかと思えて来る程に。