心をすくう二番目の君
気が大きくなって名前の由来を聞こうとした、花見の席での一幕を覚えていたのかと恥ずかしくなる。
一層顔を熱くして視線を彷徨わせていると、追い討ちを掛けられた。
「花澄」
好きな人に呼ばれる名前は、どうしてこうも艶を持って響くのだろう。
右手を取られて、細い指先から血管の浮いた腕へと目を辿らせた。
瞳を合わせると、目の奥がツンと痛く、瞬きを繰り返した。
一度息を飲み、やっとのことで絞り出す。
「……は……春志……」
前の人は自ら言い出しておいて、どういうわけか意表を突かれたように目を瞬いている。
そうかと思うと項垂れて頭を掻き、ぼそりと呟く。
「……かわいー……」
……何だろう、この甘ったるい空間は。
心を陣取るむず痒さの隙間を、微かなわだかまりが通り抜けて行く。
気付かない振りをして、もう少し恋のはじまりに心躍らせていたかった。
頭を上げた彼の、はにかんだような目元が訴え掛ける。
互いに黙りこくると、音が途切れ静寂が訪れる。
左手を畳に付き、ささやかに身を乗り出して来た。
静まり返った部屋の中に、服が擦れる気配だけが伝わる。
真摯な眼差しが、徐々に近付いて来たように思えた。
これから何が起こるのか、感付いて僅かに眉を歪めた。
──こんなことをしていてはいけない。
わたし達は恋人同士じゃないんだから。
差し迫った事態にも、まだ理性は働いていた。