そしてあなたと風になる
「ミャー,,,」

ゲージから子猫の声が響いてきた。

「悪い、調子にのった」

千尋は、まひるの瞳を見つめたまま、照れ臭そうに体を離した。

「確かに千尋さんの案も素敵ですね。」

まひるは、千尋の背中にまわしていた腕をそっとはずすと、公園に設置していた資機材を片付け始めた。

千尋も何気なくそれに同調する。

「今日録った写真や動画は、そのまま繋げるのではなく、デザイン加工して、人も猫も、新たな2次元キャラとして使用するつもりです。」

「この4日間で集めた素材もありますし、これからマンションに戻って、フレームをまとめようと思います。」

すべての機材をミニバンに積み終わった後、

「もう少しだけ、待っていてもらえますか?」


そう言って、まひるは空に浮かぶ三日月にカメラを向けた。


横顔も綺麗だ,,,


千尋は、まひるに見つからないように、スマホでまひるを撮った。

俺のものにしたい,,,


そんな千尋の気持ちにも気づかず、千尋は夢中で月を撮影していた。


「ふぅ」

今日の空はとても澄んでいて、薄雲と月、海と月、のコントラストが素晴らしかった。

あっ,,,。


まひるは撮影に夢中になってしまって、千尋を置き去りにしていることに気づき、少し慌てた。

しかし、
千尋は、待たされていることに腹を立てている様子も見せずに、いつの間にか腕に抱いた子猫を優しく撫でていた。


私も猫になりたい,,,

『どうすれば、ずっとあなたのそばにいられますか?』


だけど、
私たちはデザイナーとクライエント。


"誰にも、何も、期待してはいけない"


想い出の中の自分が警鐘を鳴らす。

小さい頃から培ってきた心の防衛反応が、まひるの恋心に蓋をする。



「千尋さん、行きましょう。」



まひるは、何もなかったように振る舞うことで、軋む心に気づかないふりをした。

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