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12.ヒーロー
もう恥ずかしいなんて言葉をわすれてしまっていた。むしろ楽だなって。

二人が戻ってきた時に私が誰かとつるんでいたら戻りにくいんじゃないかって思っていた。

そう思う事で今までの自分と、ここに留まり続ける自分に意味をもたせていたのかもしれない。

二人が戻ってきたとしても、もう私は戻れないんじゃないだろうか。あの世界に。

ただ少し、寂しいだけ。

奈津美の停学は解かれたらしいと聞いた。それでも奈津美は学校に来ることはなかった。未だ連絡もとれていない。

綾菜もずっと休んだままだった。担任から連絡はないかと聞かれることももうなくなってしまっていた。いい加減単位が危ないらしく愚痴をこぼすように話してきた事もあった。

担任だってクラスのみんなだって、本気で二人を心配しているようには見えなかった。それどころか、もう何も無かった事のように二人の席が空いただけ。そんな感じがした。

私がいなくなってもそうなのかな。

ここにいる人はみんな、ちょっと前の自分のように、過ぎ去る日を振り向かず未来を信じて止まらない。

進むだけ。


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