外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「私は、なにも。奏介は?」


同じ質問を返してみると、彼はわずかに目尻を下げて微笑む。


「なにも、か」

「奏介?」

「俺は、仕事どころじゃなかった」


どこか自嘲気味に目を伏せる奏介に、私は聞き返せずに瞬きを返した。
なんとなくうつ伏せになり、ベッドについた肘で支えて上体を浮かせると、彼は私からつっと目を逸らして言葉を続ける。


「とにかく早く七瀬に会いたくて。仕事を放り投げてでも家に帰りたいなんて思ったの、生まれて初めてだ。……情けない」


そう零す横顔を見つめて、私は慌てて首を横に振って否定した。


「情けないなんて思わない。……嬉しい。そんな風に思ってくれてたなんて」


私の返事を聞いて、奏介はようやく私に視線を戻した。
向けられる瞳の奥の光が、ふっと和らぐ。


「七瀬は俺より強いのかもな。仕事にも影響なく、いつも通り過ごしてたみたいだし」


奏介がそんなボヤきを口にするとは思ってもいなかった。
それなりに衝撃で、私は大きく目を見開く。


「そんなわけないじゃない!」


言い終えると同時に憤慨して、私は奏介の上に、身を乗り出した。
彼はわずかにギョッとした表情を浮かべて、顎を引いて私を見下ろす。


「私……この家の吹き抜けのリビング、すごく気に入ってたけど……この一週間で、ちょっと嫌いになった」

「え?」
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