外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
奏介はきっと、私が言わなかったら、傷つく。
もしも、後になって、今のこの状況を奏介が知ったら、彼は自分を責めるだろう。
『どうして、言わせることができなかった?』と――。
私は遅番業務を終えて、午後八時四十五分、オフィスフロアに上がるエレベーターの前に立った。
私が所属する不動産会社所有のオフィスビル。
でも、私の業務エリアは総合受付とビル内の共用設備があるフロアだけ。
十階から上のテナントフロアに足を踏み入れるのは稀だ。
ほんのちょっと緊張しながら、降りてきたエレベーターに一人で乗り込み、奏介の事務所がある三十階まで一気に上がった。
降り立ったエレベーターホールは、どこのフロアもそれほど変わらないけれど、自動ドアから向こう側のオフィスは、それぞれテナントごとレイアウトが異なり、だいぶ雰囲気も違う。
私は自動ドアを抜けて奥に進み、『浅倉総合法律事務所』と金色のロゴが入ったプレートを横目に、受付に顔を覗かせた。
さすがにこの時間、事務所の受付も業務時間外のようだ。
中の職員を直接呼び出せるように、内線電話と内線番号表が備えつけてある。
その前に進み、奏介の番号を探していた時、事務所の中から男性が二人出てきた。
もしも、後になって、今のこの状況を奏介が知ったら、彼は自分を責めるだろう。
『どうして、言わせることができなかった?』と――。
私は遅番業務を終えて、午後八時四十五分、オフィスフロアに上がるエレベーターの前に立った。
私が所属する不動産会社所有のオフィスビル。
でも、私の業務エリアは総合受付とビル内の共用設備があるフロアだけ。
十階から上のテナントフロアに足を踏み入れるのは稀だ。
ほんのちょっと緊張しながら、降りてきたエレベーターに一人で乗り込み、奏介の事務所がある三十階まで一気に上がった。
降り立ったエレベーターホールは、どこのフロアもそれほど変わらないけれど、自動ドアから向こう側のオフィスは、それぞれテナントごとレイアウトが異なり、だいぶ雰囲気も違う。
私は自動ドアを抜けて奥に進み、『浅倉総合法律事務所』と金色のロゴが入ったプレートを横目に、受付に顔を覗かせた。
さすがにこの時間、事務所の受付も業務時間外のようだ。
中の職員を直接呼び出せるように、内線電話と内線番号表が備えつけてある。
その前に進み、奏介の番号を探していた時、事務所の中から男性が二人出てきた。