外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
私は無意識に顔を上げて、会釈をした。
彼らも私に気付いて、「ん?」と首を傾げて立ち止まる。


二人とも上質なスーツ姿で、その襟元に、外側がひまわりで中央に天秤が象られている、弁護士徽章を着けていた。
見た感じ、奏介よりちょっと年上っぽいけれど、彼の物よりキラキラしている。


弁護士徽章は、純銀製で金メッキが施されているそうだ。
つまり、新人の弁護士の物はまだキラキラしているけれど、キャリアを積んでいくとメッキが剥がれ、元のいぶし銀が現れてしまう。


奏介の物が銀色で渋みを感じるのは、彼の弁護士としての十年のキャリアの表れ。
きっと、この二人の職歴は、まだそれほど長くはないのだろう。
……と判断できるのも、奏介と付き合うようになってから知り得た豆知識のおかげだ。


「お、お疲れ様です」


彼らの足を止めてしまったから、私は反射的にそう挨拶をした。
それを聞いて、彼らもつられて「お疲れ様です」と呼応してくれる。
そのうちの一人、紺色のスーツの男性が、立ち止まったまま、しげしげと私を観察している。
そして。


「……あ! 君、下の総合受付の。周防先生の奥様……だよね?」


どうやら、私を見知っているらしい。
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