外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「え? 周防先生の?」


先にエレベーターホールに向かっていた、ピンク色のネクタイを締めた人も、一度その場に足を止め、再び私を振り返った。
言い当てられてドキッとしながら、私は「はい」と深々と頭を下げた。


「あの。しゅ……主人がいつもお世話になっております……」


言い慣れない上に、なんだかとても照れ臭くて、私はカッと赤く染まった顔を伏せて隠した。
けれど、耳が染まるのを見透かされてしまったようで、頭上でクスクス笑い声が聞こえる。


「へえ、あなたが。確かに、あの周防先生が胸張って自慢するだけある。可愛い奥さんですね」


薄いピンク色のネクタイを締めた男性も、わざわざ私の前に戻ってきた。


「じ、自慢……!?」


信じがたい言葉にギョッとして、ひっくり返った声をあげる私に、二人が面白そうに目を細める。


「周防先生に用?」


冷やかし交じりのニヤニヤした笑みは居心地悪いけれど、そう訊ねてもらえてホッとした。


「はい。あの……まだ中におりますでしょうか?」


私の質問に、二人は頷き返す。


「ええ、まだご在室ですよ。廊下の一番突き当りが周防先生の執務室だから、どうぞ?」

「え」


入っていいの?と怯む私の前で、ピンクのネクタイの男性がIDを翳してセキュリティロックを解除してくれた。
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