外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
受付の奥のドアを開け、「どうぞ」と私を招いてくれる。
恐る恐る中に足を踏み入れた私に、指で方向を示して教えてくれた。


「それじゃあ」

「ありがとうございます!」


軽い会釈をしてエレベーターホールに向かう二人の背中に、私はお礼を言って深く頭を下げた。
顔を上げた私は、変な武者震いを覚えて、ゴクッと唾を飲んだ。


奏介のオフィスに、まさかこんなに簡単に通してもらえるとは思ってなかったけど……。
外で立ち話という内容でも、ほんの数分で終わる話でもない。


ありがたい……と感謝しながら、私は彼らに教えてもらった通り、指で示された方向に突き当たりまで進んでいった。
それまでに、弁護士の執務室らしき個室をいくつか通り過ぎる。
どのドアにも、名前と『在室』『不在』を示すプレートがついている。


夜九時を迎えるこの時間、ほとんどの部屋が不在表示になっていた。
それを見遣りながら、一番奥まった執務室のドアの前に辿り着く。


少し顎を上げると、そこには確かに『周防奏介』の名と『在室』が、プレートで表示されていた。
私は少し緊張感を高めて、ドアを叩こうとした拳を、一度胸の前で止めた。
そうして意を決し……。
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