外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「あ~……くっそ!!」


突如、中から奏介らしき声が聞こえてきて、私はビクンとして手を止めた。
いや、止まったと思ったけど、ノックにならなかっただけで、拳でドアを押していた。
ドアはしっかり閉まっていなかった様子で、内側に向けて薄く開いてしまう。
ノックもせずに、ドアを開けてしまったことにギョッとしながらも、隙間からわずかに室内の様子が窺えて、ついつい覗き込んでしまった。


煌々と明かりが灯った部屋。
一番奥に、立派な執務机が鎮座している。
横の壁には分厚い本が並ぶ書棚がある。


なにか調べ物をしていたのか、奏介は開いた本を手の平に載せて、書棚の前に立っていた。
さっきの忌々し気な声は、確かに奏介のものだったけど、私には耳慣れないほど乱暴な口調だった。


もしかしたら、よほど難解な問題に直面しているのかもしれない。
それなら、今は私の話なんかしてる場合じゃない。


このまま引き返すべきかと逡巡する私の視線の先で、奏介は閉じた本を書棚に押し戻した。
苛立ちも露わに、綺麗に並んだ本に、右手の拳を力いっぱい叩きつける。
バンッという鋭い音と同時に空気が振動するのを感じて、私はギクッと身を竦め、固く目を閉じた。
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