外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
足音と気配で距離が縮まっているのは感じていたはずなのに、私が背中にそっと手を触れた途端、彼は大きくビクンと震えた。


「私?」


奏介の答えはわかり切っているのに、肯定してもらえることを願って、私は短く畳みかける。
奏介は口に大きな手を当てて隠し、ほんのわずかな間、なにか思案するように無言でいた。
けれど、言い繕うのを諦めたのか、肩を落として深い溜め息をついた。


「……君以外、他に誰がいると言うんだ?」


どこか悔し気に答える奏介に、私の胸がきゅんと疼く。


「七瀬。非常に恥ずかしながら、確かに今のは、ついつい漏れてしまった心の声だ」

「う、うん」


奏介が早口で捲し立てるから、私の返事もちょっと上擦ってしまう。


「延び延びになっていた初夜を終えて、一旦は満足したつもりだった。しかし、悲しいかな、人間というのは欲深い生き物だ。ますます君への欲情が高まってしまった」

「欲情……は、はい」


言ってる内容を鑑みても、相変わらず流暢な言い回しに、私は簡単に論破される。
そう言えば、初夜が流れた時も、車の中でさっきのと似たようなことを零していたっけ。
あの時も耳を疑ったけど、思いっ切り本心だったんだ……。
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