外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
胸をドキドキさせながら、私は奏介を上目遣いに窺った。
彼は、見た目以上に『弁論』に必死になっているのか、私の方には目を向けず、ガシガシと頭を掻いた。


「この間……出張から帰って誰もいない部屋に入った時、一瞬目の前が真っ暗になり、頭の中で銅鑼が響き渡った。ああ、すぐに君から実家で稽古する旨を聞いていたことは思い出したから、決して怒っていたわけじゃない」


奏介のテンションに度肝を抜かれた私の前で、彼は髪をグシャグシャにしながら、太く長い溜め息をついた。
背に当てた手を無意識にギュッと握りしめると、彼は身を捩って、私から横顔すら隠してしまった。


「俺の代わりに教える兄貴の声は、腹立たしいほど弾んでた。俺のためじゃなく、周防のためだあ? なにを抜かしやがる。七瀬は俺の妻だ。周防の嫁じゃねえ」


あまりに朗々とした語り口調だから、どんなに言葉が荒くても、私は完全に圧倒されていた。


「初夜が流れたのも、今、七瀬がお家事情に巻き込まれるのも、うちが茶道家元のせい。ただでさえ自分の出自を恨みたくなったというのに、兄貴のヤツ……七瀬を共有した気にでもなっていやがる。畜生。俺が時間を取れれば、こんなっ……!」


私は、もはや口を挟むのは諦め、ただまぬけにぽかんと口を開けてしまう。
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