外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
再び鼓動がドッキンと大きく跳ね上がり、喉に声が引っかかってしまう。


「じゃあ、最初から予定して約束しておこう。……と言っても、七瀬が風呂に入る時間に俺が帰ってこれる日は……」


本気でう~んと考え込む奏介を、とにかく早くバスルームに入れるために、私は思い切って声を張った。


「新婚旅行!」

「へ?」

「し、新婚旅行デビューで、お願いします!」


咄嗟に口を突いて出たものの、それが自然だと思った。
まあ確かに、もう私たち結婚してるんだし。
世間一般の新婚夫婦の感覚からは、だいぶ遅れてるかもしれないけれど。
何度も言うけど、私と奏介の新婚生活は、すれ違い続けてるわけで……!


「新婚旅行……遠いな」


私の返事を聞いた奏介が、本当にがっかりした様子で、遠い目をした。


「全然遠くない。あと数ヵ月だよ? あ、どこに行くかも決めなきゃ……」

「もうこの際、いちゃいちゃしまくれる場所希望」


焦って言い募る私を溜め息と共に遮って、奏介はバスルームに入り、パタンとドアを閉めてしまった。
それを見送って、私はホッと胸を撫で下ろしたのだけれど。
開き直った様子で、奏介があっさり口にした『いちゃいちゃ』が引っかかる。


――もしかして、私の想像の斜め上をいく『いちゃいちゃ』なんじゃなかろうか……。
そんな予感がして、ほんの少し、私の胸に甘い不安が過ぎった。
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