外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
しかも、後三十分もすれば、次期当主の藤悟さんのお茶席がある。
茶道界で有名なイケメン茶道家は、一般人にも広く知られていて、彼目当てのお客様も多い。
今、私と奏介がこうして話している間にも、続々と入ってきているようだ。


初心者でも気軽に日本文化に触れ、簡単に楽しめるように、略式で催される大寄せ茶会。
老若男女、和装洋装入り乱れる中、お客様を装って入り込まれたら、顔も知らない私には、その人とわからない。
一度受付を済ませれば出入りも自由ということだし、この中から不審な四十代サラリーマンを見つけ出すなんて困難だ。


「奏介は、その人の顔と名前、わかる?」


奏介に視線を戻し、少し急いて訊ねる。
それに、彼は何度か曖昧に頷いた。


「『牧野晴彦』。……しかし、本名で受付を通るはずがない。名前は知っていても無意味だろう。顔も、直接の面識はなく、数年前の社内旅行で撮ったという集合写真を入手しただけだ」


奏介はそう言って、小さな溜め息をついた。
私と入れ替わるように、彼も庭に目を向ける。


「相当準備して仕掛けてきたようだから、服装も考えてくるだろう。和装であれば、よほど近くで目を凝らして見なければ、判別できない」


悔しいけれど、それには私も、頷くしかなかった。
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