外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
オフィスビルのテナントに、化学メーカーが入っているから、受付でも研究職のお客様を対応したことはある。


すぐに何人かの姿形が脳裏に浮かぶ。
確か、几帳面な角ばった文字を書く人が多かったような……。
そういう考えの下で受付簿を最初から見返してみる。


そんな私の隣で、少し手持無沙汰になった様子のお弟子さんが、口に手を当てて欠伸を噛み殺しながら呟いた。


「今日は初日だから、洋装のお客様は少なくて、華やかですね」

「え?」


受付簿に意識を集中させていた私は、一瞬彼女の言葉の意味がわからず、慌てて顔を上げて聞き返した。


「いつもは洋服の方、もっと多いんですか?」


それに、彼女は「ええ」と頷く。


「初日は招待客の割合が多く、後の二日間と比べると、大寄せでも、あまり初心者向けとは言えないんですよ」

「招待客……というと、常連さんとか上客の方とか。茶道経験者ということ?」


私が重ねた質問には、彼女は首を横に振る。


「茶道という意味では、初心者の方もいらっしゃいます。ですが、華道や日舞を嗜んでる方も多いので、着物を着慣れている方がほとんど」

「ああ、そういう……」

「明日明後日になると、洋装でいらっしゃる方も増えますよ。本当の意味の初心者の方たちですね」
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