外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
私は彼女に相槌を返しながら、足の爪先まで自分の姿を見下ろした。


今日のお客様は、着物での立ち居振る舞いに慣れている人ばかり。
そんな中、恐らく誰よりも着物に不慣れの私が、午後はお運びさん。
最初から荷の重さを感じていたけれど、これはますます……と胃が痛くなってきたその時。


「……あっ!!」


瞬時に考えが頭に閃き、思わず大きな声をあげてしまった。
お弟子さんが、ギョッとした顔で私を見遣る。


「な、七瀬さん?」

「あ、すみませんっ」


咄嗟に取り繕って謝ったものの、私の心臓はドキドキと一気に加速し始めた。
もしかしたら。
顔がわからなくても、その視点で探せば、『牧野晴彦』を特定できるんじゃないだろうか――。


「それだけ着物を着慣れたお客様の中で、恥ずかしいとこ見せられませんね。気をつけないと」


もっともらしく言い繕うと、お弟子さんは「大丈夫ですよ」と答えてくれた。


「七瀬さんも、最初のお茶会の時に比べたら、だいぶ身ごなしも綺麗になりました」

「……ありがとうございます」


それには素直にお礼を言いながら、私は自分の思考に自信を強めていく。


そう――。
私は最初のお茶会では、お作法どころか、着物での立ち居振る舞いも無残なものだった。
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